すること

 今は金曜日の夕方、日が長くなったせいか、2階の書斎から見る空はまだうす曇で、夕方にはなっていない。それでも今日一日は少し寒かった。久しぶりにスポーツジムに行って帰ってきたばかりである。先週から今週にかけて、土日が潰れたり諸々の事情でジムに行けず、運動不足だった。体外に汗などを発散することができないだけ、体内に蓄積されて、何か鬱積しているような気がする。その要素は何と言うのかわからないが、脳内分泌物のようなものだろう。運動すれば精神的にプラスに作用し、しなければマイナスになるのだろう。

 今日一日を振り返ってみた。午前中は中学校に学校訪問があって、帰宅してすぐコメントを書いた。ただ学校訪問する前に、一時間ほど時間が空いていた。どうしようかと思ったのだが、3月に研修したり講演したりする資料がまだ出来ていないことを思い出して、手をつけてみようかと思った。一時間では無理なことはわかっている。とても時間が足らないが、途中まででも良いからと思って資料を見返した。するといろいろなことに気づく。こんなこともあった、あんなこともあった、それをメモ帳に書き出したら、面白い知見が得られるかもしれないと思った。研究ではないが、一歩手前の気づきなのだが、エビデンスはきちんと揃っている。さらに調べていると、別の知見もありそうだったが、そこで時間が切れた。子供がゲームに夢中になって、途中で親から止められたようなものだった。

 学校訪問から帰ってきて、参観した授業のコメントを書いて、メールの添付で送った。昼食を取ってすぐ何か気になって、書斎に上がってメールを見た。来週の委員会についての簡単な打ち合わせをオンラインでやりたいというメールがあった。顔を見ながらの打ち合わせが伝わりやすいことは確かだが、来週の委員会までほとんど時間がなく、相手の都合もあるから打ち合わせの日程を決めるのは難しかろう。ふと電話をしようと思った。幸い相手が電話口に出た。こんなことも珍しいが、昼食の時間のすぐ後だったことが幸いしたのだろうか、タイミングよく相手と話ができた。オンラインで話し合うまでもなく、短時間で打ち合わせは終わった。それからすぐに支度をして、スポーツジムに行った。

 プールで泳ぎながら、今日の出来事を考えた。丸山眞男の「である」ことと「する」ことを思い出した。今日の自分は「する」ことを優先したのだ。まるで歯車がうまく噛み合ったかのように、事態が動いていった。お金も持っていただけでは何も意味がなく、使ってこそ価値が出てきて経済が活性化する。つまり「する」ことによって人や物が動いて、事態が変化するのだ。「である」ことだけでは、事態は変わらない。世の中は「する」ことによって、良い方向にも悪い方向にも動いていくのだが、何もしないよりはましなのではないか。歳を取ると、「である」ことの方に傾くのだが、自分はできる範囲で、「する」ことの方を選びたいと思う。

 文脈は離れるが新聞に、「暮れてなほ人影ひとつ雪下ろし」(原道雄)の句があった。雪国の人たちの苦労が偲ばれる。薄暗くなっても雪下ろしをしなければ、明日の生活に困るのだろう。頑張っている人に応援したくなる。もしお年寄りなら、「お気をつけて」と言うしかない。しかしそのままではどうしようもないのだ。「である」ことだけでは、不平と不満をつぶやくしかない。「する」こと以外に、問題は解決しないのだ。大変だがなんとかしようと考えて、雪下ろしをしているのだろう。しかし終わればほっとして、夕飯も美味しくいただけるだろう。この世の中は思い通りにはならない。歳を取れば足腰が痛くなったりするのが普通だが、それでも「である」ことを守って、じっとしていればますます体は動かなくなる。小さな一歩でも「する」ことを続けていれば、事態は動いていく。そしてどこか楽しい気分になる。時間があれば明日、資料作りの続きをやりたい。先ほど家内が、今夜はカレーライスだと言ったので、子どものようで恥ずかしいが、夕食が楽しみだ。スポーツジムで運動したお陰である。

 

投稿者: 赤堀侃司

赤堀侃司(あかほりかんじ)現在、(一社)ICT CONNECT 21名誉会長、東京工業大学名誉教授、工学博士など。専門は、教育工学。

すること」に2件のコメントがあります

  1. 20年近く前、まだ20代半ばだった頃に、インストラクショナルデザインという専門分野があるんだと、その概念の存在自体を初めて知り、その頃に赤堀先生の「授業の基礎としてのインストラクショナルデザイン」もAmazonで探し当てて拝読した者です。それから勝手に私の中ではお師匠さんの一人とお慕いしておりまして、このブログも数年前に知って拝読するようになりました。父が今堀先生と同い年でして、「平凡に生きる」は父にプレゼントしました。前回の「価値づける」から今回の「すること」に連なるお話は、とりわけ珠玉の作品でした。いつも素敵な文章をありがとうございます。今後も一読者として、日々のブログを楽しみにしております。どうしてもお礼をお伝えしたくなりまして、ぶしつけなコメント失礼いたしました。

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    1. 林様へ
      赤堀侃司です。
      コメント、ありがとうございます。
      そうですか、お父さんが自分と同じ年ですか。
      私もなんとかやっています。思ったままの日記ですので、気楽に
      お読みください。
      励みになります。お礼まで。

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