北海道教育大学の姫野先生の、教師の見え、についての優れた研究がある。教師のわざの中でも優れたわざは、見えにあるという。詳細なデータを元に、見えについて分析しているが、私がその研究を直接に聞いたのは、日本教育工学会のポスター発表であった。ベテラン教師と教育実習生の、子どもに対する見えの違いについての研究であったが、ワクワクするような面白い内容だった。確かに、教師は昔から、ずっと子どもをどう見るかのわざを磨いていたのかもしれない。その可視化しにくい見えに対して、科学というメスを入れて見事に教師の経験による差を明らかにしたので、いくつかの質問をした覚えがある。見えとは理解することでもある。物理的には目の網膜に映り、それが脳の部位に伝達する仕組みであろうが、その脳の働きによって、見えが違ってくる、つまり対象の理解が異なるので、いかに正しい脳の働きにするかとも言える。正しい脳では身も蓋もないが、私たちは目で見たり読んだり耳で聞いたりしながら、つまり五感を通して脳に情報を入力しているので、ベテラン教師は、子どもを正しく理解したいと思って、五感を研ぎ澄ましているのだろう。表面でない子供の真意を汲み取っているのだろう。それは、すべての人に通じることでもある。