助け合う

暑い暑い、今日は特に暑い一日だった。土曜日の夕方となり、今週も今日も終わろうとしている。今日も外回りの用事が多くて、突き刺すような日差しを全身に浴びて自宅に帰ってくれば、冷蔵庫で冷やした水とアイスキャンデーで喉を潤すのが極上のひとときである。先ほども買い物に出かけて帰ってきたらもう汗びっしょりで、一日に何回冷水を飲むのだろう。時折食卓にある梅干しの容器から手づかみで食べる時がある。らっきょとか、たくあんとか、白菜とか、子持ち昆布とかあれば、手を伸ばすだろうが、あいにくと食卓には梅干ししかない。家内の入院中、娘が来て、夏はどんな食べ物もなるべく冷蔵庫に入れるようにと忠告されたからである。仕方なく冷蔵庫を開けるのだが、食卓の上にあるのと違って、手を伸ばして蓋を取って口に入れるという動作は、何か悪いことでもしているような気になって、母親に内緒でいたずらでもする子供のような気分になるので、冷たい水を飲むしかない。冷たい水は冷蔵庫に保存していることが普通なので、堂々と飲めるからである。実は今日は特別な日であった。17日間入院していた家内が、今日の午前中に退院した。もちろん自分も出かけて、リハビリの先生や看護婦さんなどにお礼を申し上げ、大きなスーツケースを持ってタクシーで自宅に帰ってきた。病院の食事は誰でも知っている通りの薄味で、お昼はおにぎりを食べたいという。塩味の効いた鮭とツナのおにぎりを、歩いて1分のローソンで買ってきた。さぞかし美味しかったのだろう、満面の笑顔でほおばっていた。甘いものが食べたいと言って、貰い物のお菓子を食べていた。入院中の約束で、夕食は鮮度が良くて極上の味だと評判のお寿司を食べたいと言っていたので、先ほど買ってきた。無事に何事もなく予定通りに退院できた。同室の患者さんとの話が面白くて、少しも苦痛なことはなかった、リハビリも順調で後遺症もなく、楽しい入院だったと、「楽しい」という言葉を初めて聞いた。それは素晴らしい。自分も長いようで短かった17日間、レシピを見ながら料理を作り、掃除・洗濯・買い物・支払い・郵便物の処理など、自宅と病院を行ったり来たりしながら、振り返ってみれば新しいことをいっぱい覚えた。腰と足の痛みの脊柱管狭窄症の病気で手術をしたのだが、先生はたぶん名医だったのだろう、しびれも痛みもすっかり消えて元気になった。ただ腰を曲げるのはなるべく避けて、年内は腰を大事にするようにとの注意があった。自分も年内は家内の補助や手助けをする必要がある。しかしあまり不安はない。短い期間であったが、家事に対してささやかな自信を得たからである。今日は娘が都内から手伝いに午後やってきた。特に仕事はなかったが、いろいろな話をして時を過ごした。新聞に、「ある時は母のごとくにある時は姉のごとくにみえる我が娘(こ)よ」(田代旅子)の句があった。この句は母親が詠んだ句だが、その気持ちはよく分かる。親も子もそれぞれ助け合って生きていくようだ。今日から多分年内ぐらいまで、家内は1階の居間にレンタルベッドで寝ることになる。2階の寝室は自分専用になるが、それも良いだろう。長い人生のうちには、いろんなことがある。親子も夫婦もそして兄弟も、みんな助け合って世間を渡っていくのだ。

投稿者: 赤堀侃司

赤堀侃司(あかほりかんじ)現在、(一社)ICT CONNECT 21会長、東京工業大学名誉教授、工学博士など。専門は、教育工学。

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