期待外れ

今日は土曜日の夕方、といっても空は青空で、まるで春のような陽気である。暖かくて昼間コートは要らなかった。スポーツジムから帰ってと書きたいところだが、今日は違う。石川県の片山津温泉から、ちょうど帰宅したところである。聞きなれない温泉かもしれないが、加賀温泉郷の一つで、ホテルの目の前に広い湖が広がっている光景に、心が癒される。山中温泉・山代温泉等と並んで有名だと言うが、自分はこの温泉郷に初めて行った。昨年の暮れに申し込んで、1泊2日の温泉旅行だった。旅行のパンフレットに写真付きの蟹づくしという夕食に誘われて、申し込んだのだ。それは偽りではなかった。文字通り、蒸したり焼いたり温めたり混ぜご飯にしたり、あらゆる料理法で蟹の味を堪能した。そんな誘惑に負けて、家内と相談して昨年の年末に申し込んだ。2月下旬になると、テレビの天気予報が気になった。北陸地方は例年にない大雪で、車が大渋滞したり雪下ろしで怪我人が出たり、温泉気分ではないような予報であった。これは大変かもしれないという不安があって、防寒具も靴も大雪に耐えられるような身支度をして出かけた。ところが自然は人間の予測を平気で覆す。今日は加賀温泉郷あたりも快晴で、手袋もマフラーも要らず、外の風に当たるのが心地よいという、ありがたい期待外れだった。しかし行って良かった、景色も料理も温泉も部屋も、ホテルの周りの散歩も加賀温泉の駅前の土産店も、そして新幹線の中の仕事さえも、すべて充実して満足できた。だから天気予測は、プラスに外れたのである。先ほど帰宅して、自分が応募していて気になっていた審査結果を、ネットで調べた。何年ぶりなのか、いや何十年ぶりなのか、不採択通知を受け取った。そうか不採択なのかと思って、かなり落ち込むかと思ったが、実はそうではなかった。人はどこか予知能力があるのか、今回はだめかもしれないと思って、家内に、自分の仕事に関わる予算を今年は計上したいから、と言って話し合ったことがある。もちろんそれは当たり前のことなので反対することもなく、それがよいと合意していた。世の中には、期待にプラスに外れる場合とマイナスに外れる場合がある。誰でもそんな経験をしているだろう。しかしそれが本当にプラスなのかマイナスなのかは、先になってみないとわからない。マイナスの場合は落ち込む場合もあれば平然としている場合もあり、自分の力ではどうにもならないのだから、まあそれもいいだろうと受け入れるしかないのである。大抵の人はそのようにして毎日を生きているのだろう。新聞に、逆わぬことにも慣れて寒日和(田中俊)の句があった。この作者は何に逆らわぬのだろうか、俳壇の選者は、奥様だろうかと評していたが、永く生きていると、それが賢い処世術になるのだろうか。若い時には、憤慨したり悲しんだりという感情の振幅が大きいので揺れ動くが、この作者のように、逆らわぬことにも意味がある。今日、自分は期待に外れた、暖かい天気予報と不採択通知の両方を体験し、逆らわぬことの自然体を知った。逆らわぬと言えば、どこか消極的で後ろ向きのような気もするが、果たしてどうなのだろうか、どちらが後ろ向きか前向きか、わからない。今日の体験では、どちらにしろ受け入れるほうが前向きでプラスなのではないか、なるほど逆らわぬことなのか、今日は1つ学んだ。

投稿者: 赤堀侃司

赤堀侃司(あかほりかんじ)現在、(一社)ICT CONNECT 21会長、東京工業大学名誉教授、工学博士など。専門は、教育工学。

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