ズボンプレッサー

今は土曜日の夕方、といってもだいぶ時刻が遅くなってしまった。これには理由がある、といってもブログで書くほどのものでもないが、先ほどまでズボンプレッサーの組み立てをしていたからである。誰でもわかるように、すぐにできる簡単な仕組みなのだが、ブログを書こうかと2階の書斎に登っているときに、ズボンプレッサーが届いたのである。ブログの方を優先すれば良かったのだが、急に組み立てたくなった。それには理由がある。ホテルでは、ズボンプレッサーがエレベーターの前などに置いてあって、プレスしたい人はそのプレス機を部屋まで持ってくるのだが、面倒なのであまり使ったことはない。この前大阪に出張した時に、ふと思った。人前に出る時には、やはりズボンの折り目はピシッとした方が良い、という当たり前の事に気がついた。そういえば昔使った古いプレス機があったと思い出して、家内に聞いたら居間のソファーの下にしまってあるよと言われて、取り出した。もうずいぶん古いので埃で汚れていたが、雑巾できれいに拭いたら見違えるようになった。これはありがたい、早速使ってみようと使ったのは良かったのだが、固定する部品が壊れてしまった。壊れると無性に使いたくなって、あれやこれやと物置小屋の道具箱から、怪しげな固定器具に使えそうなものを取り出して試してみた。しかしどうにも言うことを聞かない、諦めるかと思っていたら、家内が電気屋で買えばいいではないか、という誰でも考える平凡なアイディアを言った。その通りだ、なぜこんな簡単なことに気づかなかったのかと思って、一昨日近所にある電気屋に行って物色した。店員さんに聞くと、ありませんと言う。今時こんな電気製品を買う人はほとんどいないのだろう、そうなるとますます欲しくなった。どうしようかと思っていたら、家内が通販で注文すればいいだろう、というこれもまた極めて当たり前のアイディアを言った。なぜこんなことに気づかなかったんだろうと思って、さっそく探してみた。すると確かに販売している。しかしながら需要が少ないせいか、ほとんどのプレス機は数週間から1ヶ月ほど、手元に届くまでに日数がかかるという。探しながらまた無性に欲しくなった。すぐ手に入れることはできないかと、まるで駄々っ子のような無理難題を押し付けて探していたら、まるで奇跡のように、今日注文すれば明日届けますというプレス機と取り扱い店があった。本当だろうか、疑心暗鬼ながら性能や仕様を読んだ。1階の居間の隣が和室で、そこに洋服やズボンなどを掛けているので、プレス機の大きさや電源までの距離などを調べてみたら、まるでオーダーメイドのような仕様で、ぴったりだった。昨日の午後3時前だったろうか、注文してその後市内の学校訪問をした。今日の予定は、午前中の仕事と午後のスポーツジムだったのだが、スポーツジムから帰って、ビタミンCを補給し終わって2階の書斎に登りかけた時に、届いたのだ。こんなこともあるのか。文脈は遠く離れるが新聞に、振り袖は母のお下がりとふ孫の二十歳の笑みに残る幼さ(安田悦子)の句があった。育ちの良い娘さんなのだろうか、母親の振袖を着て成人式に出かけたのか、その笑顔に幼い頃の面影が見えたのだろう。大人になって世間の波にもまれれば、持って生まれた素質や性格もとげとげしたり変化するのだが、一方幼い頃のままの変わらない特性もある。歳を取って思うのは、素質や性格は、若い頃と違った部分と子供の頃に戻るような部分が混在しているようだ。今日自分がズボンプレッサーを欲しかったのは、まだ大人になりきれていない子供の特性のままだろう。それは喜んでいいのか悲しんでいいのか分からないが、欲しいものが手に入っただけで良い日であった。

投稿者: 赤堀侃司

赤堀侃司(あかほりかんじ)現在、(一社)ICT CONNECT 21会長、東京工業大学名誉教授、工学博士など。専門は、教育工学。

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