冬支度

今は、土曜の夕方だが、午後5時を過ぎると、窓から見る外の景色は、夜になる。12月だから、もう冬なのだ、気持ちだけは、まだ晩秋のつもりだが、すっかり冬模様になっていて、自然の月日の経つ時間と、自分の感覚に、ずれがある。誰も同じかもしれない。今週から、我が家の外壁を塗り替えるために、職人さんが来て、仕事をされている。外壁の水洗いをし、雨どいの塗り替えをし、昨日から、家中を薄いビニールシートで囲って、塗料の飛沫が飛んでも窓などを汚さないように、丁寧な処置をしている。自分の書斎は、2階なのだが、3面の窓のすべてが、薄いビニールシートで覆われて、太陽の日差しが薄ぼんやりとしか、入ってこない。それは、日差しが柔らかく、外もぼんやりとしか見えず、薄い皮膜で覆われたような部屋になり、雰囲気が違う。この雰囲気は、実は好きだ。今は、夜なので、いつもと同じだが、今日の昼間は、薄い卵の殻に閉じ込められた、雛のような感覚になる。気持ちが、落ち着いて、午前中の原稿書きや資料作りでは、いつもより、少し深く考察できたような気がした。まだ、書斎に加湿器を稼働させていないが、加湿器を使うと、部屋に水蒸気が舞い上がる、それは静かな気体だが、冬を感じさせる。ふと、昔を思い出した。今のような時期だろうと思うが、研究室で、学生達と一緒にデータ分析をしていた。部屋には、加湿器があって、少し水蒸気の量が多いような設定だったのか、その場所を中心に、白煙が渦巻いていて、研究室の窓は、すべて曇っていたから、ちょうど、この書斎のように、薄いビニールシートで覆われた感じで、ともかく、外の風景が見えない部屋だった。そこに、ふと坂元先生が、ドアを開けて、入って来られてので、自分は驚いた。ちょっと用事があってね、と言いながら、頑張っているね、と言われて、少し雑談をして、退出された。あれは何だったのか、超多忙な先生が、ふと来られたことは、何か他の用事があったのだろうか、と詮索はしなかった。そうであれば、率直に言われたはずで、文字通り、通りすがりで、研究室をふと覗きたくなったのではないか、と思う。今の自分が大学に行ったら、そして知り合いの先生がいたら、ふと研究室のドアを開けたくなるだろう、と思う。研究室には、どこか、そんな魅力があって、そこに行けば、未知な世界がある、世間とは違う、夢中になれる世界がある、ような期待が、人を誘うからである。あれは、確かに冬だった。外と内の温度差のために、窓がすべて曇って、世間からも閉じた部屋で、今の書斎の光景に似ていた。新聞に、物置に空き場所ひろげ冬に入る(中村重雄)の句があった。冬支度のために、物置を整理していたら、空き空間ができた、これで、冬を迎えられる、と思ったのか、寒い冬を乗り越えるには、お正月を迎えるためには、年度内に、すべきことがある、整理しておこう、と投稿者は思ったのか、冬に入るとは、そのような身を引き締める気持ちが起きるのだろう。少し文脈が離れたが、自分の書斎は、しばらくは、冬ごもり用の部屋になる。明日から、加湿器を使って、冬に備えるとしよう。紅葉の秋もいいが、冬も良く、仕事に集中できるだろう。

投稿者: 赤堀侃司

赤堀侃司(あかほりかんじ)現在、(一社)ICT CONNECT 21会長、東京工業大学名誉教授、工学博士など。専門は、教育工学。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。