今日は土曜日、そして今は夕方で、日の暮れるのは早く、既に書斎の窓から見える光景は、マンションの規則正しい窓明かりの集合体だけである。今日も、昨日も、時が慌ただしく過ぎ去っていったが、今は、スポーツジムから帰ってきたばかりだが、この後、お風呂に入り、テレビを見ながらの夕食の時間になる。楽しい時間が待っている。歳をとってきたら、食事の時間は、若い頃より、もっと楽しい時間になった。そして、美味しさが倍増したような気さえして、何故だろう、と家内に言ったら、心身のバランスがいいからだ、と学校の教師のような答えが返ってきた。確かに、今日はスポーツジムで、プールで泳いだし、ここ数日は、ジョギングをして、汗びっしょりになったから、運動で身体の新陳代謝が良くなっているのだろう。そして、仕事もそれなりにあって、頭を使っているので、現役の頃と変わらない生活だからかもしれない。半年くらい前に、少し歯茎が痛いことがあって、何か固いものなど、どこか遠慮がちに食べていたような気がする。都内の歯科医に、3ヵ月に1回だが、歯の掃除のために通院しているが、これまで、長い間使ってきた入歯を新しい入歯にしたのが、1か月くらい前である。今回の入歯は、2つ目なので、これまでのものは、相当に長く、もう20年近いのではないか、と推測するが、10年以上使っていることは確かである。都内の歯医者が言うには、確かに良い入歯だが、さすがに寿命がきて、特に上の歯茎に圧力がかかっているので、歯にとっては良くない、特に、この歯が大切な役目を果たしているので、大事にして長持ちさせるほうが良い、というアドバイスに従って、新しい入歯を作ってもらったのである。最初に使った瞬間から、口に馴染み、幼馴染に出会ったような感じで、何の違和感もなかった。今朝、歯磨きをしながら、さすがに、プロは凄い、上の歯茎が、何かしっかりしてきたような気がして、嬉しくなった。何より、特にこの歯は大事に使って長持ちさせなさい、と言う言葉に同感した。患者のことをよく考えて、少しでも自分の歯を大切にしなさい、ということは、自分の人生を大切にしなさい、と言われたようで、嬉しかったのである。医者が人の命を預かる仕事をしているので、医は仁術、と言われるのであろう。新聞に、こんな句があった。夫のこと看取りし若き研修医涙ぬぐわず頭下げたり(佐々木節子)。最後まで力の限りを尽くして、夫の命を救おうとしたが、努力も空しく寿命が尽きた、が、夫のために尽くしてくれた若い研修医に、ただただ感謝で一杯で、涙をぬぐうことも忘れて、自然に頭が下がったのであろう。自分の経験とは雲泥の差であるが、歯を大切にすることも、命を大切にすることも、同じ医者の使命であり、そこに技術のすべてをかけるのである。凡人ながら、自分も見習いたい。