試験の採点

昨日は5月の連休も終わって、仕事や学校も始まる日だが、在宅勤務であっても同じで、1つのオンライン打ち合わせと採点と審査の仕事をした。採点とは、免許更新講習の受講生の試験の回答を読んで、採点するのだが、これが面白く勉強になる。ビデオオンデマンドなので、受講生は、かなり長時間の視聴をした後で、試験を受けるのだが、記述式と選択式の両方が課される。選択式は自動採点するが、記述式は、当然ながら講師が採点する。ある高校の先生が、教員なり立ての若い頃の経験を盛り込んだレポートがあった。この先生は、その頃、定時制高校に勤務していたが、若い教師が、年齢層の幅広い生徒を前にした時、どうして授業をしていいか戸惑った、無理もない、保健体育の授業だったので、出産とか健康とか怪我の対応など、知識はあっても、経験がないことを話すのは、何か絵空事のように思えて、生徒に話してもらった。既に出産を経験した女生徒は、どんなに苦しい思いをしても、我が子を見たときの感動は忘れないとか、運転手をしている男生徒は、帰宅する時、アパートの窓から灯りが見えると、温かいお風呂や湯気の出る夕餉や、幼い我が子が待っていると思うと、家族の有難さを感じるとか、現実を生きている姿を語った。なるほど、保健体育の授業であっても、保健や健康だけではない、すべてが関わっている、その現実の世界と離れて授業をしても、何も役立たないのではないかと思い、それ以来、この教員は、なるべく現実との関わりを意識するようになった、と言う。こんなエピソードに満ちたレポートを読むと、こちらが勉強になる。自分が担当した講義科目は、コンピュータと教育のような内容だが、これも現実や社会や生活と切り離して論じることはできない、すべての科目は総合的で教科横断的で、人々が暮らす今の生活と密接に関わっている。私たちの生活の中に、知識が埋め込まれている、という学習論を思い出す。採点とは、受講生から学ぶことである。

投稿者: 赤堀侃司

赤堀侃司(あかほりかんじ)現在、(一社)ICT CONNECT 21会長、東京工業大学名誉教授、工学博士など。専門は、教育工学。

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