マスクで会議

昨日は月曜日で、都内で対面の理事会があったので、定例の事務局会議は火曜日になった。理事会名は書いてもいいだろう、三菱みらい育成財団であるが、文字通り三菱グループ27社が資金を出して、三菱設立150周年記念で設立した財団である。自分は理事会よりも審査会のほうが面白く興味があるが、三菱企業の役員が顔を揃える理事会なので、多少緊張しながら昼食を兼ねて、その後の審議に参加した。丸の内界隈は皇居と隣り合わせの場所で三菱村と呼ばれているようで、昨日の会議も三菱クラブという商事のビル21階の高級そうな部屋で開かれた。昼食はマスクを取って黙食とでも言うのか、黙って食事をするのであまり美味しい味がしないし、会議はマスク越しで話すが、久しぶりのネクタイを着けているので、どこか硬くなる。小説かドラマのシーンのようで、自分でも何か場違いの部屋に居るような感じがする。隣席は、坂東真理子昭和女子大総長で、三菱企業以外の外部有識者は自分と2人だけなので、どこか気の利いたというか、本質的なことを言わなければ、というプレッシャーも感じる。だが、議論が始まると、緊張は飛んでいって、内容の深さに引きずられ、そして面白くなるから不思議だ。昼食の時とは別の世界が開けたのは、何故だろうと考えたら、ふとそれはマスクのせいではないか、と思った。人は、偉い人の前では小さくなる、影に隠れたくなるのは、人情である。教員が生徒の机を巡視するが、勉強が苦手な生徒がノートを隠す光景はよくあるが、その心情がよく分かった。今、自分はその生徒の立場なのだ、だから自分を隠したいのだ、ただマスクのお陰で、すべての自分を出さなくても良いので、自由に話せるのではないか。自分はこれまで、マスクを外せ、もっと堂々と話せ、と学生にもスタッフにも言ってきたが、あれは間違いだったかもしれない、自分が弱い立場になって、そこに気が付いた。自分は好きな道だけを歩いて来たので、横道にそれた人の気持ちが分からなかった、すまなかった、と思ったが、自分のことは本当に見えないものである。昨日は、それを教えてもらった。

投稿者: 赤堀侃司

赤堀侃司(あかほりかんじ)現在、(一社)ICT CONNECT 21会長、東京工業大学名誉教授、工学博士など。専門は、教育工学。

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