論文を読む

日本は台湾と正式な国交はないので、台湾にも日本にも大使館はない。その代わりに交流協会という外務省の外郭団体があって、大使館の代理的な業務を行っているが、その中の1つが、留学生の受け入れである。海外留学生受け入れ30万人計画に基づいて、奨学金による留学生の生活支援をしているが、国の税金を使うので、優れた人材を選抜しなければならない。将来、台湾と日本の橋渡しができるような人材が育てば、両国にとって国益になる。交流協会は、東京と台北市にあるが、外務省職員が出向している。例年なら、その審査である面接のために、9月に台北市に出張するが、今年はコロナ禍のためにオンラインになる。面接審査はよいが、その前に書類審査をしなければならない。書類といっても、審査員は、内容の審査なので、留学生の研究計画と論文を読まなければならない。日本の有名大学の大学院の修士と博士課程の希望者なので、卒業論文か修士論文か学会誌の論文、そして研究計画であるが、専門分野が少しでも違うと、きわめて難しい。分野は、社会学系、人文系、理工系、医学薬学系に分かれていて、自分は、理工系に所属している。一口に理工系と言っても、群論のような数学、宇宙論、有機化学、通信工学、AIや地震学まで、きわめて幅広いので、すぐに想像できるように、相当に勉強しなければ、とても理解できないし、質問もできない。その上、かなりの割合で英語論文で提出するので、英語で質疑応答する。その場合は、関連文献を英文で読んで、英語の専門用語も勉強する必要がある。ある年に、忙しくてどうしても時間がなく、次年度からこの審査を辞退しようと思って、もう一人の若い現役教授と話したら、自分と同じように、きわめて難しいと答えた。有名大学の理工系の現役教授でも同じなのだ、まして自分のような高齢の退官した人間なら、分からなくて当然と開き直って、今日に至っている。毎日少しずつ論文を読むことにしたが、昨日は、ハイエントロピーの合金に関する材料工学の研究で、エントロピーは物理概念だから知っているが、なぜ合金、それも記憶合金に使われるのか、読んでいると、そして関連論文をネットで調べていると、面白くなってくる。材料系では、最近流行っているらしい。どの分野でも研究は止むことがない。外は猛暑、書斎の中はエアコンで快適、その中で先端研究に触れること、こんなにも有難く、ぜいたくなことはない、と幸せな気持ちになった。

投稿者: 赤堀侃司

赤堀侃司(あかほりかんじ)現在、(一社)ICT CONNECT 21会長、東京工業大学名誉教授、工学博士など。専門は、教育工学。

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