長い時間をかけて方法を考え、関連する資料を探して熟読し、ようやく実験や観察や調査などの研究が始まる。右往左往しながら、ともかく制約された時間の中でデータを収集し分析して結果を得る。文献を調べると、特に新しい知見が得られているわけではないが、しかし対象者も違うし、多少の結果の新しさもありそうなので、発表に応募する。面白そうな内容なら、参加者から質問やコメントが送られて、評価されれば少し自信を持つので、論文として投稿する。たぶん、こんな営みが研究者の常ではないかと思うが、なんと気の長い仕事だろうと思うことがある。多くの研究発表は、よほどでないと引用もされず、物置に閉まったオモチャのように置きざれにされてしまう。なんと無駄な作業だと思うこともあるが、わずかでも良い評価を得ると、嬉しくなってまた走り出す。どこか宝探しの子供に似ている。小学生の孫が友達と秘密基地を作るのに夢中になって砂だらけの真っ黒な姿で夕方遅く自宅に帰って、母親に叱られたと、ラインで読んだ。考えれば自分とあまり変わらないのかもしれない。研究者とは、子供がそのまま大人になった職業である。望むらくは、雑音に惑わされず宝探しだけをしたいが、そうはいかないのが世の中である。それが、子供と大人の違いである。