何でも計画を立てて、実行して、うまくいかなければどこに原因があるかを調べて、その原因を除去するような方策を立てて、実行して、というPDCAサイクルは、ほとんどの仕事や生活をそつなくこなす方法論である。問題解決や課題解決が重要視されている学校教育でも、このPDCAサイクルの考えは反映されており、ほとんどの学校でも実施されていると思う。考えてみれば、この方法論は科学という土台に立っている。どこか原因があるので結果が生じるという考えは、科学的思考とか論理的思考なので、誰もその方法論の妥当性について疑問は持たないだろう。しかし、現実の生活や仕事ではどうだろう。予期せぬ出来事が起こる、例えば、新型コロナウイルスパンデミックのような予期せぬ出来事にどう対応するのか、計画はない、あっても過去の経験であり役立つかどうか分からない、そもそも原因が不明確である、という状況の中で、世界中が右往左往した。国や自治体の責任者は、論理的な資料を持っていないので、専門家という科学的な根拠を求めた。科学とは明確な論理なので、因果関係に基づいて判断する。しかし、この科学もあてにならないのではないだろうか。忖度で付き合う人間関係、あいまいな決め方、アナログの文化、空気を読む日本など、科学的な思考とは正反対の日本におけるコロナ禍への対応であったが、世界が不思議がるような感染者数や死者数の低さになった。たぶん、これは科学に基づく意思決定の危うさを示しているのではないだろうか。現実世界は、科学のようなきれいな論理で、できていないと思う。