Heckman教授は、就学前の幼児教育の経験が、その後の40歳における人生の成功者になるかどうかに、大きく寄与していることを証明した「ペリー就学前プロジェクト」の研究で、2000年のノーベル経済学賞を受賞したことで良く知られているが、その研究結果が、認知的な学力よりも、やり抜く力、頑張る力、壁を乗り越える力のような非認知的スキルが重要な役割を果たしたことで、世界中に非認知的能力(スキル)が広がった。そのスキルを尺度化したのがGRITであるが、オンライン学習にはGRITのような、やり抜く力、頑張る力が必要になることは、賛同してもらえるだろう。私が心配するのは、コロナ禍後の認知的学力、精神的社会的な非認知的スキルの格差である。つまり、学力面、精神的なストレス、親や先生や友達とのコミュニケーションの社会的スキル、などで学校への復帰時における格差のことである。このコロナ禍の期間、置いてきぼりになった子供、家庭が見守った子供、教員がオンラインでケアした子供、友達同士でコミュニケーションした子供などによって、大きな差が出てくると予想される。もし学校に復帰できない子供が大多数に達したら、それは大人の、社会の責任である。オンラインだけでは子供を救うことはできない。オンラインは手段であるから、それを生かすも殺すも人であり、そこに学校の存在価値がある。Heckman の40年研究(ペリーはアメリカの地域の名前)で実証したように、ペリー地区で置いてきぼりになった子供は、40年後には人生の敗北者になる割合が高かった。同じ事が起きる可能性もある。オンラインでもいいので、一刻も早く、すべての学校が手を差し伸べなければならない。